ご来館戴いたS.Z様
比較的穏やか陽気となりました本日の14時半頃にS.Z様のご来館を戴きました。
S.Z様がご来館された時は先に入られたお客様へのご案内の途中でしたので、S.Z様には「最初にDVD映像(15分間)をご覧戴き、先のお客様のご案内が終わってからのご説明となりますが、それでもよろしければ、ご案内いたしましょうか?」とお尋ねしますと、「それまで待っています。時間は全然大丈夫です」とのご返事でしたので、先のお客様のご案内をそのまま続けさせて戴きました。
S.Z様のDVD映像ご視聴が終わった時も、先のお客様へのご案内が続いていましたので、S.Z様は1階の資料展示・閲覧室をご自身でご視聴されていました。
1階の資料展示・閲覧室では、当社の「日甜アグリーン(てん菜糖業からてん菜産業へ)」の取り組みを分かりやすく表現した「アニメーション動画」がリピート再生されており、「牛のゲップ中のメタンガスを抑制する飼料の研究開発」等の取り組みをS.Z様は興味深くご視聴されていました。
(ご参考 アグリーンはアグリカルチャーとグリーンを掛け合わせた造語です)
S.Z様をお待たせしてから約10分後、先のお客様へのご案内が終わりましたので、S.Z様に「大変お待たせして申し訳ございません」とお詫びさせて戴き、ご案内を始めさせて戴きました。
「帯広製糖所模型」では、「帯広製糖所を背景として走行している十勝鉄道の白黒写真」をお見せしながら、「線路の下には一面に広がっているものがありますが‥、実は、これらは全部ビートなんです」とお伝えしましたところ、S.Z様は「えっ、ビート?」と白黒写真を見て目を白黒されていました。
私から、「敷石のようにも見えますが、実はビートなんです。ビートは貨車の荷台から線路下に降ろされて堆積されます。ビートを製糖所に送るにはビートの堆積山に流送水を当てますと、崩れ落ちたビートは水が流れている水路に入ります。水よりも軽いビートは流送水の流れに乗って製糖所まで送られていきます」とご説明しました。
「自社私鉄写真」では、「これだけ大量の原料を工場に集めるため、当社前身の北海道製糖(株)は国や行政に頼らずに自ら私鉄鉄道を運行しました。その後、地域の方々からの人も載せてほしいとのご要望にお応えする形で十勝鉄道(株)を創設して旅客業務も行いました結果、沿線地域には学校、病院、農業施設などが建てられ、街はどんどん栄えていきました」とご説明しました。
更に、「十勝鉄道の愛称であるとてっぽの語源」をご説明した後、「かつて運行していた十勝鉄道4号機関車とコハ23号客車は現在も大事に保存されているんです。廃線跡の遊歩道であるとてっぽ通りに…」とお伝えし、近くにお寄りの際は「ボランティアの方々のお掃除によってピカピカに輝いている2両の車両」を一度ご覧戴きますようお勧めしましたところ‥
すると、S.Z様が「実は、帯広駅付近からとてっぽ通りなどを通ってビート資料館まで歩いて来ましたが、機関車があるのは気が付きませんでした」とおっしゃったので、「えっ、あの距離(約4km)を歩いてですか?」とお尋ねすると、「そうです。帰りも歩いて帰ります。帰りにその機関車を見たいと思います」とのご返事でした。
私が言うまでもなく、S.Z様は既に「とてっぽ通り」から当館前庭の「工場前駅」までをご自身の足で歩かれて、かつての鉄路の長さをご実感されていたようでした。
「ビート模型」では、「ビートを見たことは?」とお尋ねすると、S.Z様は「見たことがあります。実はプライベートで帯広に10月頃に来たときに、畑に山積みされたビートを見ましたが、最初はビートには見えず、岩だと思ってました。北海道では畑からいっぱい岩が出てくるのかな?と思っていました(笑) 後になってからビートと気づきましたけれども‥」とお答えされました。
確かに、収穫後のビートには土砂が付着し、一見、黒色の塊に見えますので、ビートを見慣れない北海道外の方々からすると岩や石のようにも見えるかもしれませんね。
私から、「ビートは別名サトウダイコンと言われ、ダイコンやカブの仲間のように思われますが、実はヒユ科に属したホウレンソウの仲間です。お砂糖の原料となるビートは果物並みの糖分がありますが、エグミによって生では食べられるものではありません」とビートの生食としての難しい一面をご紹介しました。
すると、S.Z様は「ビートって、ついこの間まで食用のビーツ(テーブルビート)のことだと思っていました」とおっしゃったので、「ビーツも飼料用ビートも砂糖原料用シュガービートも同じ仲間です」、「ただ、ビーツは食用なので店頭に並びますが、シュガービートは店頭には置いていません。なぜなら、農家様が生産したシュガービートを各糖業者が全て買い取りさせて戴いているからです」とお答えしました。
また、寒冷地作物であるビートは「寒さには強い一方で、暑すぎるのは苦手」であり、近年の地球温暖化がビートに多大なる影響を与えている実情をご説明しました。
特に、令和5年度ではビートには致命的な病気である褐斑病(かっぱんびょう)が蔓延し、収量及び糖分が激減しました歴史的凶作につきましてお伝えしました。
一方、「ホウレンソウにも似ている茎葉部は収穫時に切り落とされた後、畑にすきこまれて緑肥になり、根部からはお砂糖以外に、ビートパルプ、オリゴ糖製品、ベタイン(アミノ酸)、パン酵母(イースト)等も製造しており、ビートには捨てるところがありません」とご説明しました。
「ビートパルプ」では、「ビートから糖分を抜き取って絞った後の繊維分から飼料を製造しています」とペレットパルプをお見せすると、S.Z様はお手に取られ、「甘い香りがして、かりんとうみたい‥」との感想を述べられました。
私から、「甘い香りがするのは若干の糖液をふりかけているからです。ただ、かりんとうみたいには噛めないと思います、とても硬いので‥。牛は水に浸して約3倍に膨らんだものを食べています。もともと3倍あるものを圧縮していますからとても硬いのです」とお伝えしました。
「12種類のお砂糖」では、各お砂糖製品をご覧戴きながら、私から「大変失礼なご質問とは思いますが、お砂糖の色は何色に見えますか?」とお尋ねすると、S.Z様は「白?、茶?」とお答えされましたが‥
実は、「お砂糖の結晶は無色透明であり、光の乱反射によって白く見えるのです、雪やかき氷と同じです。もちろん、漂白剤は一切使っていませんし、そもそも、漂白する必要がないのです」とお伝えしました。
他に、光の乱反射によって白く見える実例として、「シロクマの体毛も無色透明で、構造がストロー状で中に空洞があることから、光が乱反射します。皮膚は真っ黒なので、毛が無いとクロクマなんですけどね‥」と付け加えましたところ‥
すると、S.Z様は「シロクマの毛のことは知ってます。帯広動物園にも行ってシロクマを見ましたので‥」とシロクマの毛につきましては既にご存じのようでした。
更に、「三温糖の語源は‥」、「糖液は加熱する程色濃く(カラメル化)‥」、「お砂糖の賞味期限は‥」、「三温糖と黒砂糖の違い‥」を図等を用いてご説明しました。
「特別記念展示室」では、「皇族方の帯広製糖所の御巡覧」のお写真等が展示されており、昭和天皇の御行幸の際における当社前身の最上級のお心遣いに対しまして、S.Z様は大変感心されていました。
当館の前庭に鎮座されている昭和天皇御行幸の記念碑を館内の窓ガラス越しにご覧戴きながら、「帯広製糖所の後には十勝農学校(現帯広農業高校)も御行幸され、校舎前に行幸記念碑があります。西5条のコンビニエンスストア付近には昭和天皇がお通りになられた道路である証として行幸道路記念碑が鎮座してます」とお伝えしました。
すると、S.Z様は「西5条通りのコンビニエンスストアの場所はわかりますので、行幸道路記念碑も行ってみたいと思います」とおっしゃいました。
尚、行幸記念碑につきましては2016年12月14日付け館長ブログ(当館前庭に設置されている石碑をご紹介)でご覧戴けます。
歴史展示室では、「エドウィン・ダンやクラーク博士等のお雇い外国人達の意見の相違‥」、「松方正義・正熊の親子二代にわたる挑戦‥」、「台湾(帝国製糖)と当社前身(北海道製糖)とのかかわり‥」、「日本甜菜製糖(株)には新旧があった‥」等につきましてお伝えしました。
「休憩室」に展示されている「世界の砂糖生産分布図」をご覧戴きながら、さとうきびが人間が甘いこと分かったことを示した記録(アレクサンダー大王のインド遠征)が紀元前300年頃に残っているのに対して、ビートは1747年マルクグラーフのショ糖分離成功から300年足らずと歴史が浅いことをお伝えしました。
しかし、その後のナポレオンの大陸封鎖に伴うビート糖業奨励等によって急速に欧州を中心としてビート糖業が発展し、誕生からわずか100年で、1000年以上の歴史を持つさとうきびのお砂糖生産量を追い越す程に至りましたことを付け加えました。
「帯広製糖所内部模型」では、帯広製糖所OBの方から寄贈して戴いた手造りの模型をご覧戴きながら、「模型は昭和30年に一度完成しましたが、帯広製糖所が能力増強等で改造したため、それに合わせて模型の方も昭和37年に改造されたようです」とご説明したところ、S.Z様はあまりの精巧さに驚かれていました。模型に添付した工程進行番号の順番に沿って、製糖工程の流れを簡単にご説明しました。
約1時間半のご説明を終えました後、当館の「ブログ」へのご協力をお願いしたところ、快諾して戴きました。誠に有難う御座います。
ブログ用写真の撮影場所につきましては、S.Z様が「帯広製糖所内部模型で‥」と即答されましたので、帯広製糖所内部模型にお並び戴いたところで、ハイ チーズ!
お伺いしますと、S.Z様はお仕事で十勝に定期的にご滞在されているようでした。
「どうしてビート資料館に?」とお尋ねしますと、「ビートは食用のビーツ(テーブルビート)のことだとずっと思っていましたけど、実は北海道では違うことを知りました。お砂糖の原料となるシュガービートに大変興味を持ったからです」との非常に嬉しいご返事でした。
最後にS.Z様から、「大変面白かったです。来てよかったです。また来ます」と言って戴きました。本当に感謝!感謝!です。
本日は当館までご足労して戴きまして、有難うございました。
つたない説明にもかかわらず、ご熱心に耳を傾けて戴き、誠に感謝いたします。
ビートやお砂糖についてご理解をより深めて戴きましたなら、幸いでございます。
またのご来館を心よりお待ちしています。
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